ストーリーらしきものはないが、描写で読ませる作品である。情景描写に情緒があり、また、人物描写にも細やかな観察眼が感じられる。小雨の降る春の情景が、法事の少々沈んだ雰囲気と主人公のもやもやとした心情にマッチしている。小道具のラジオが登場する理由にしても無理のない説明がなされており、破綻なくまとまっている。読後感も悪くない。なお、三回忌は没後満2年で行うので、経過年数が3年というのは誤りと思われる。