豊泉

THE HIROSAKI UNIVERSITY LIBRARY BULLETIN
弘前大学附属図書館報  Print ISSN 0919-8563

No.13 1998.3 Page 2-3



新入生を迎えて

丸 山 正 道

 ご入学おめでとう。君達は,これからの大学生活を,どう過そうとしているか。図書館と書物は,君達の学生生活に,どの位の比重を占めるだろうか。私が学生生活を送ったのは,昭和三十年代の前半から昭和四十年代の前半であった。その当時と比べると,図書館は,遥かに開かれた図書館となっている。当時は,平日は午後六時まで。土曜日は午後一時まで。日曜日は閉館であった。したがって,図書館の利用も,授業の空いている時間帯と放課後であった。複写機の用紙も悪く,薄青色系の用紙が使われていて,十年もすればコピーした文字が消えてしまう運命にあった。
 公共の書物を扱う点を一,二申し上げると,一つは,書物に線を引かないこと。一つは,書物を書写する場合は,万年筆ではなく,鉛筆を用いること。
 読書は,青春時代を豊かにする,大きな財産の一つである。日本文学を志す人は,一冊でも多く日本の文学作品を読むことである。私は,素読ではあるが,二か年をかけて,『源氏物語』を全部読んだ。君達に薦めたいことは,幾つかあるが,その一つは,学生時代に和本(影印本)を読む習慣を身につけてほしい。例えば,冷泉家時雨亭叢書で,『明月記』・『拾遺愚草』・『古来風躰抄』等を読むことである。或いは,在九州国文資料影印叢書で,『自讃歌』・『宝物集』・『大和物語』等を読むことである。初めのうちは読めないかもしれない。しかし,読んでいく。この体験が貴重である。
 大学院生になると,書庫に入れる。このことは,大変ありがたいことである。
 昔は,卒業論文を書くには,三マメが必要だと言われてきた。一つは,眼マメ,一つは,手マメ,一つは,足マメである。豊かな学生生活を送られることを切に祈る。

まるやま・まさみち 教育学部 数授)



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