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豊泉  THE HIROSAKI UNIVERSITY LIBRARY BULLETIN  弘前大学附属図書館報  Print ISSN 0919-8563

私のイメージする大学図書館

弘前大学長  吉 田  豊

 数年前のこと,本欄に私が見ただけでもいろんな形の大学図書館があることを書いた(No.6,1995. 9)。当然のことながら,図書館の大きさなどは大学規模によっても異なるであろうし,単科大学と総合大学ではもちろんのこと,教育中心大学,研究中心大学,そして弘前大学のような教育・研究大学等々,それぞれの大学の性格によって図書館の内容も違うはずである。いずれにせよ,教育・研究アクティビティーの高い大学ほど大学のより中心的な位置に,堂々と目立つ存在で建てられているのが大学図書館のように思う。欧米の主要大学ではギリシャのパルテノン神殿を想わせる大理石柱の立ち並ぶ玄関構えで,図書館は学問の府を象徴する建物となっている。これが長い間私のイメージする大学図書館であったが,今も基本的には変わりない。
 文部省の学術審議会は「科学技術創造立国を目指すわが国の学術研究の総合的推進について(平成11年6月29日)」の中で,大学図書館のあり方について,(1)電子図書館的機能の整備・充実,(2)目録所在情報の遡及入力,(3)保存図書館(集中文献情報管理センター)の整備の3点の推進を提言している。大学図書館は情報化時代における情報源の中核施設として,大学とその地域の学術研究全体の進展を支える上で極めて重要であるとの視点からである。確かに今後速いテンポで電子媒体の情報流通が進み,図書館の電子図書館的機能がいよいよ整備され,教官や学生が図書館との専用回線を介して,研究室に居ながらにして図書や文献を24時間いつでも閲覧できるような時代も到来するであろう。また,大学間の相互利用などを考えると,図書の目録所在情報のデータベースが必要であり,情報の遡及入力も急がれねばならない。図書館の利用が高まれば高まるほど保存図書館としての中身の整理が必要となり,このことは利用頻度の高い情報ニーズへの迅速な対応とサービスの向上にもつながる。これらもこれからの大学図書館としての私のイメージであり,是非そうあるべきと思っている。
 上述のように電子図書館等の整備は年々進められねばならないが,一方それがどんなに進んでも印刷を媒体とする知識の吸収や学術調査が図書館からなくなるわけではない。特に大学にあっては,図書館は“静かに本を読むところである”との基本概念があり,これまでの図書館の形態と機能はそれなりに極めて重要であることに変わりない。図書館には,友人と打ち合わせするとか,グループで話し合うとか,図書館ならではの独特な雰囲気の中での人間的交流が従来にも増して期待される。学生が期末試験や就職試験の前に友人を誘い合いながら,図書館で共に情報を調べ,確かめ合いながら勉強する姿も大学としては欠かせない光景である。大学の図書館は近くの市民や留学生のためにも開放され利用されねばならないが,そのためには蔵書を多くし,利用者への利便性を確保し,アメニティーの高い場を提供しなければならない。これらの充実した姿の図書館も私のイメージにある。
 以上3つを挙げたが,いずれも予算さえあれば,すぐにでも弘前大学の図書館に実現させたいものばかりである。本学の図書館本館は幸いにしてキャンパスのほぼ真中に,大学の正門から近い場所にあり,また学内外の催し物が多い創立50周年記念会館や放送大学が真向かいに建っており,これらと共になって大学と地域との交流の場(communicationzone)を形成している。学外者の利用を高めるために,最近,図書館の利用要項を全体にわたって改正し,夜間利用時間も午後10時まで延長するなど種々新しい対応を行っている。電子化も急速に進み,HIROIN経由による検索も24時間可能となった。このように本学の図書館も私のイメージする大学図書館に向かって進んでいるようでご同慶の至りである。しかしながら,今日の国際化時代にあって世界の大学と競争するためにはまだまだ整備が足りないことを痛感する。本学との大学間交流協定のある外国の大学を訪問し,一層この感を強くするが,本学の図書館もやがては私のイメージと大きく重なることを期待し,学長としてはそのために努力したい。 

(よしだ・ゆたか)


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