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国際化と弘前大学附属図書館

農学生命科学部教授  元 村 佳 惠

 近年,弘前大学は国際交流に力を入れている。平成8年には大学間交流協定を締結した大学は4大学であったが,平成13年5月現在14大学となり,さらに数大学との間で協定締結の準備が進んでいる。また,留学生数は平成8年には63名であったが,平成13年には111名と倍増に近い状況である。外国人留学生が授業やゼミ以外の時間に大学内で自由に過ごせる場所は,図書館と生協であろう。弘前大学附属図書館は世界的な範囲で書物や雑誌を所蔵しており,他の研究機関との間の文献のコピーサービスも大変充実しており,留学生ばかりでなく修士や博士課程の学生及び研究者にとって,重要な資料の宝庫である。弘前大学に在学する外国人留学生や大学院の研究留学生に弘前大学附属図書館について,若干の意見を聞くことができたので,この機会にそれらをご紹介したい。
 弘前大学附属図書館には,留学生用書籍の棚が設けられ,多くの国の言葉と日本語が対比された本や,ビデオと本がセットになっているものなどが用意されている。それらを用いて日本語や日本についての勉強をすることができ,来日して間もない留学生にとっては大変有用であり,好評である。しかし,その書棚に「図書館からのお知らせ」としてビデオなどの教材をカウンターで貸し出すことなどが書かれているが,漢字まじりの日本文であるため,理解できない留学生が少なくない。留学生向けのお知らせ等には,英文を併記してほしいとの要望が目立って多かった。
 蔵書検索にコンピューターを利用するシステムは,世界中で採用されており,研究留学生の中にはすでに本国で利用して来た学生が多い。本学図書館にも同様のシステムが設置されているが,画面上の指示が日本語であるため,利用し難いとの意見があった。この件については,英語による蔵書検索ソフトの設置はできないものであろうか?
 次に,図書館内のほとんどすべての表示や案内が日本語(漢字)で書かれているので,理解するのが大変困難であるとの意見が多かった。留学生は来日してから日本語を習得する速度は驚くほど早く,短期間に日常会話には不自由を感じないほどに上達するが,読み書きは別の問題である。漢字圏以外の国から来た留学生にとって,ひらがなやカタカナを覚えることは比較的やさしいが,漢字を覚えるのは至難の技であることを理解する必要があろう。「開館時間」等の各種案内や各書棚に表示されている「自然科学」とか「哲学」などの表示,さらには,参考調査係の奥にある辞典・辞書コーナーの棚ごとの表示に英語を付記してほしいものである。
 現状では弘前大学に在籍する留学生111名中,中国からの留学生数は60名を占め,英語圏の国々からの留学生は少数である。しかし,留学生数の増加によって,世界のいろいろな文化圏からの留学生の受入の可能性が高まり,漢字を理解するのが困難な学生が年々増加すると予測される。世界共通語として,まずは英語表記が必要であろうと考える。
 今回は,少数の留学生から感想を聞いただけであるが,これらはかなり多くの留学生の共通の要望と考えて差し支えないように感じられる。また,これらの意見は氷山の一角であり,外国人留学生はこの他にもいろいろな要望や意見を持っている可能性がある。図書館関係者の負担が大きくなることに問題があるが,英語のわかる職員をカウンターに配置することや,留学生に対して図書館の利用について説明したり,彼らの要望を聞く機会を作ることなども,ご検討いただければ幸いである。

(もとむら・よしえ 植物エネルギー工学講座)


弘前大学附属図書館 Hirosaki University Library