豊泉

THE HIROSAKI UNIVERSITY LIBRARY BULLETIN
弘前大学附属図書館報  Print ISSN 0919-8563

No.1 1993.10 Page 2


図書館報の発刊にあたって

松原 邦明 (弘前大学附属図書館長) (まつばら・くにあき 教育学部教授)

 周知のように、大学図書館の使命は、大学における教育研究・学習等の諸活動に対して主に図書館資料に基づく各種の情報関連支援サービスを提供することにあるが、その使命達成のために、図書館は、利用者とのコミュニケーションの拡大とサービスの充実発展を図る方途を確立することが肝要である。それに必須な図書館の施設・機能・活動等に関する広報活動に限り本学図書館の事跡をみると、総じて活発であったとは言い難い。特に、利用者に対して、定期的に図書館情報を提供すべき館報が発刊されてこなかったことは、大変遺憾なことであった。しかし、この度、幸いにも全学のご理解のもとに図書館報「豊泉」創刊号が発行されることとなり、本学全館員とともに真に欣快とするところである。
 ところで、今や全国の大学はその活性化や教育研究水準の向上に努め、その社会的責任を果たすことを強く求められ、自己点検・評価の下に改革に取り組んでいる。本学もその流れの最中にある。本学図書館も弘前大学を構成する基盤的施設の一環として、全学・他の部局と歩調を合わせながら、その固有な使命、役割を自覚し、本学図書館自体の抱える現状と課題を冷静に把握し、一層の改善に努めることが求められている。主要な改善目標と考えられる事項は、(1)教育研究、学習上必要な多様な図書館資料の体系的な収集・整備、(2)各種資料や学術情報の迅速な利用者への提供システムの構築、(3)利用者の多様なニーズに対応するための人的体制の整備・充実、(4)図書館施設の整備・充実、(5)他大学等との相互協力や地域社会への開放等が挙げられる。
 なべて改善目標の達成は、言うは易しく行うは難しであるが、その到達度は現状の物的人的施設の能力や関係者の意欲如何に左右されることは否定し難い。その意味で、関係者各位に本学図書館の現状の一端を報せたい。『平成3年度大学図書館の現状』により、事項毎に国立大学図書館の全国平均値と本学の数値と比較すると、本学は蔵書数で約29千冊、年間雑誌受け入れ数で98種、図書館資料費も1、600万円少ないばかりか、図書館職員数では平均41名に対し34名でしかない。本学図書館としては、このような劣弱な事情を抱えながらも、全学の学術情報流通システムの基幹的ゲートウェイとにての役割を発揮できる体制の確立を急がなければならないと考えている。そのために、学内外からの深い理解と強力な支援を得られるよう働きかけていきたい。
 最後に本誌名を「豊泉」とした由来を附記する。これは、本誌編集委員会へ私案として提出したものであるが、そのきっかけは、わが国における最初の近代的学制の基礎ともなったと評される明治9年の『仏国学制』(文部省翻訳・出版)の附録上巻に、次のような記述部分を見出したことにある。「学校ニ於テ教フル所ノ学科ノ外ニ、又人智ヲ広ムルノ豊泉アリ、即チ文書(ドキウマン)及ヒ識見ヲ博ムルノ物品ヲ供シ」云々と述べ、図書館が学校にとり不可欠の教育施設であることと、その基本理念を示唆した箇所があり、本学図書館の存在理由の何たるかを教えられた思いがした。本学図書館が何よりも、教職員・学生から(こんこん)¥と汲めども尽きぬ豊かな知の泉として評価され、とりわけ学生から「学ぶこと」を教えてくれた豊泉であると感知される施設でありたい。
 本誌の発行の思いはこの点に尽きる。利用者各位へ熱い支持を願って発行を続けたい。


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