豊泉

THE HIROSAKI UNIVERSITY LIBRARY BULLETIN
弘前大学附属図書館報  Print ISSN 0919-8563

No.7 1996.1 Page 3


図書館

 ── かって、今、さて

佐藤清一

 晴れて弘大の学生となったのは−−、むかしむかしのことだった。「図書館利用法」なんてガイダンスもなく、閲覧券を貰い、長い長い廊下(コンクリートむき出し)を通って、図書館に入る。右手−−閲覧室入ってすぐ右側に新聞台・雑誌台。図書目録カードの棚(カードケース)がその左−−さらに左手奥にカウンター、否、むしろ窓口の雰囲気、があってたいていは無人。チンとやると閲覧係(4人)が出て来る。(昭和26年度蔵書数74、481冊。館員9名)
 本の借り方は 1貸出カードに記入して提出  2現物を押す  の2方法があった。1は普通の方法で、なんということもない間接方法。2は直接法である。ガラス板(窓ではない、ハメコロシ)の向こうに、背表紙を向けて本が並んでいる。ガラスの下部は、2cmほどの隙間となている。希望の本を指で押すと、本は事務室側にへっこむ。その本を館員の方が窓口へ運んでくださり、貸出カードに記載して借り出す(図を見て下さい)と、ま、こんな仕掛であった。在庫があるかないか、すぐわかる便利な方法であった。辞書類はガラスの本棚の中。

 閲覧席数は50−60人分程か、リノリューム張りの多少うす暗い室であった。16時50分までが開館時間、一時貸出は16時30分までだったか。雑誌台には、思想・理想・群像・文芸春秋(この本を読むのは、学生の風上にもおけないとの風潮が漂う)など。これらの雑誌は木製の台に綴じつけられていて、開いて読むのは自由でも、閲覧席には持って行けなかった。
 この図書館は、今の大学会館のあたりにあり、官立弘高の建物そのもの、いかめしく、講義室からは長い長い廊下の、その向こうにあった。夕暮れ、窓からフクロウが見え、雨が終わった後、廊下ではアオダイショウを見たりでびっくり。当時は、トリもヘビも図書館に通ったのである。
 物理学の所属生は、小生をいれて3人。本を長期借り出す(独占する)ために、学生Aが返却すると、その場でBが借り、Bが返すと、その場で佐藤が借り、佐藤が返すその瞬間にAが借りる。こんな具合で1年を過ごした。コピー機も電卓も、そのような名すら存在しなかった時代。
 学成って3人はめでたく御卒業、もちろん佐藤は3番以内で卒業(これもトのおかげです、昭和30年蔵書94、356冊)。

 それから春秋がいくつ過ぎましたやら

 かの佐藤は、今、弘前大学附属図書館医療短期大学部分室委員、附属図書館協議会委員をしています。
 分室は、閲覧室と書庫が一体化していて、総面積317平方メートル、その一区画が事務室(22平方メートル)、事務官2名、事務補佐員2名)、平成7年3月現在蔵書数、和洋35、407冊、雑誌367種、火・木・金は18時まで、月・水は17時までの営業です。昔と比べると、開館時間は長くなったのですが、学生の需要に応えるにはまだ不足です。夜間開館はやがて普通のこととなるでしょう。書架は開架式ですから、分室内の図書利用はすべてフリーです。台上の雑誌だなんて・・・・わかって貰えますまい。そして席数は58、クーラー付き。学生数との比で見ると、席数だけは増加しています。
 分室に入ると「窓口」なんてありはしません。カウンターです。ここで入室者を数えていましたが、自動計測に変わりました。(入館者自動計測システム)。利用統計を下の表に示します。

   *平成7年10月平均入館者数・貸し出し冊数(分室のみ、学生定数620)

  ┌───────┬───┬───┬───┬───┬───┐
  │       │ 月 │ 火 │ 水 │ 木 │ 金 │
  ├───────┼───┼───┼───┼───┼───┤
  │入館者数(人)│261│379│263│322│283│
  ├───────┼───┼───┼───┼───┼───┤
  │貸出冊数(冊)│ 49│ 75│ 66│ 48│ 45│
  └───────┴───┴───┴───┴───┴───┘

 分室内で利用されている冊数は、開架制ですから不明ですが、貸出冊数の3ー5倍というところでしょうか。カバン類の持ち込みは禁止(平成元年ー平成7年8月)でしたが、行方不明になる本があって、学生に不便をかけましたし、管理の事務官を泣かせもしました。そこで、320万円を投じてライブラリィディテクションシステムを設置し、無断持出しをチェックすることになりました。その効あって、カバン類持込みフリーで学生は便利、管理はスムース、今のところ良いことばかり。狭い分室に席数が多いものですから、近頃シャベリが五月蝿いとの苦情しきり。これは短大生皆さんの心掛けの問題(シャベリが五月蝿いのは、タケシやイチロー(野球の・・・ではない)のせいらしい。困ったもんだ。)こんな次第で、分室は順風満帆良く利用されています。あとは、目指せ夜間営業!

 さて、図書館のこれから。
 他大学の図書館を見学して感心させられるのは、無用の空間の豊富さ。玄関を入るとカウンターまでの距離が十分過ぎる程ある。そこは広い空間で、ここかしこにソファー、テーブルがあったり(もちろん禁煙)、壁画があったり。この「無用空間」が本館にはない、まして分室においておや。機能一点張りでゆとりに欠ける。この貧乏性をなんとかしたいものだ。これからの図書館、本(図書・雑誌・文献)の検索(全国版)は、利用者まかせだが、エレキ仕掛けで思いのまま(館員のアドバイスは当然としても)。欲しい文献が見つかると、ファックスの如きでスルスルと出て来る、コストフリーでは無いかも知れないが。もちろん館所蔵の本・文献を利用するのは御自由に(一部稀覯本は空調完備の書庫に収まっているだろうけれど)。視聴覚設備も完璧。将来こんなシステムになると、図書館に行かなくたって、本・文献が手に入る。しかし、そこまでヒトが出不精になるのは考えもの。図書館とは、せっせと行ってみるべきところ、生涯学習時代なので、学生のみならず、市民も一緒に。新しい情報の溢れているところ、なにしろ昔は、トリすらヘビすら図書館に通ったのであるから。

(さとう・せいいち 医療技術短期大学部教授)


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