図書館報「豊泉」TopNo.23目次arrow 前ページ次ページ arrow


第四回特別展示会「レオナルド・ダ・ヴィンチの解剖手稿」展報告

 附属図書館医学部分館では特別展示会を昨年から開催している。昨年は,第一回「ノーベル賞にみる西洋医学の系譜」,第二回「弘前藩医松野家史料展」をもった。本年は,第三回「オスラー展」を6月に,そして,今回の第四回特別展示会として「レオナルド・ダ・ヴィンチの解剖手稿」展を開催した。11月1日(木)から11月30日(金)の一月間で,主催医学部分館運営委員会,共催医学部医師会,後援青森医学振興会による。

 「最後の晩餐」や「モナ リザ」でよく知られているルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452―1519)は絵画のみでなく建築,工学,医学,哲学など多くの分野に関心をもち,膨大な観察記録と考察を残した。英国ウィンザー城王室図書館所蔵の「解剖手稿」が最新の保存技術下に置かれることを機に国際復刻版の発刊が計画された。日本語版は350部である。復刻といっても現代もてる最高の印刷技術と紙質が用いられた。今回の展示のものには日本語版166の番号が付されている。レオナルドと同時代の解剖書「ケタムの解剖図譜」(復刻版)や,近代医学の出発点となったベルギーの医師アンドレアス・ヴェザリウスの「全身筋肉図」(復刻版)も展示した。世界と日本を対比して観ていただこうと考え,江戸時代中期の蘭学者杉田玄白の「解体新書」およびそのオランダ語版の原本であるドイツ人医師ヨハン・アダム・クルムスによる「簡明解剖学」(Anatomische Tabellen,ドイツ語版3版,1725),さらに,解体新書の改訂版も置くことが出来た。解体新書の附図は数日おきにページをめくり,期間中全附図を目に出来るようにした。レオナルドは,当時のレベルをはるかに超え,精神の座としての脳解剖さらには解剖学そのものを深く探求し,手稿として残した。レオナルドの描写した脳室模型と同様な脳室の蝋注入模型を本学第一解剖学講座の協力で展示できた。レオナルドのメモは鏡文字の名で知られている。実際,鏡に映してどのようにみえるか鏡を置いてレオナルドの文字をみていただいた。

 今回の展示資料の多くは図書委員でもある麻酔科学講座松木明知教授の提供による。また同じく図書委員である解剖学第一講座正村和彦教授からも書籍及び脳室鋳型標本の提供をいただいた。

 開催期間中の総入館者数593名。一日28名の方々の参観をいただいた。その一割の54名が医学部外からの参観者であった。

 一市民の方から寄せられた感想の一部を紹介し本報告を終わりたい。
 「レオナルドの解剖手稿の実物(印刷物とはいえ)を初めて目にすることができ非常に感動しました。実に熱心に観察し,克明に文字を書き入れたものだと思います。今後とも,こういう貴重で,ふだん目にすることのできない本,資料の展示を望むものです。」

(医学部分館資料情報係)


弘前大学附属図書館 Hirosaki University Library