図書館報「豊泉」TopNo.22目次arrow 前ページ次ページ arrow


「オスラー展」終了

附属図書館医学部分館長  工 藤  一

 医学部分館では,特別展示会の第3回目としてオスラー展を開催した。期間は平成13年6月1日から7月6日のほぼ一月である。その報告をしたい。
 医学部では,平成11年5月21日から二日間,雑誌“弘前医学”創刊50周年を記念し,メディカルコミュニケーションセンターで稀覯本の展示会をもった。この時展示された稀覯本は Fabrica をはじめとし,書名は知っているにせよ実物をみることが出来たことは,実にすばらしいことであった。結果として,医学部分館は小さいながら展示室を持つようになった。元々は,実習用顕微鏡保管室であった小部屋を少しずつ改造したものである。そして,昨年から展示会をもてるようになった。これまで3回の特別展示会を公開で開催してきた。第一回「ノーベル医学・生理学賞に見る西洋医学の系譜」,第二回「弘前藩医 松野家史料展」そして今回の第三回「オスラー展」である。医学部図書委員会で展示会テーマを議論した当初から,今回のオスラー展は開催計画の一つであった。市民公開も当初からの原則である。
 これまでもそうであったが,今回も,展示書籍や関係論文は図書委員でもある麻酔科学講座松木明知教授の提供による。同時に,日本オスラー協会の全面的支援をいただき,日本オスラー協会長の聖路加国際病院理事長日野原重明先生からは自ら作製したオスラーのパネルを40数点また書籍を提供していただいた。文字の書籍や論文のほかに,複写画像であってもオスラーの生涯を追えることは,今回のオスラー展を一層身近な展示会にできたものと思っている。9月中旬には,本学出身の小見山喜八郎先生が日本オスラー協会で今回のオスラー展について報告するとの連絡を頂戴している。
 6月15日には,日野原重明先生の「オスラーの考えにそっての21世紀の医の展望」と題する講演会をもった。医学部講堂は満席で,多数の学生や学外の方々の聴講の姿は嬉しい限りであった。講演時間は大幅に延び,青森市からお出での一市民からの質問にも丁寧な応答を聞くことができた。今,この講演会を活字化しているところである。また,医療情報部の協力で作製した本講演会のビデオは視聴覚教材として,いつでも使用できる。
 開催期間中,700名の参観者を得た。遠くは熊本から,東京からは7名のツアーを組んでの参観もあった。参観者名簿には各地の名をみることができる。
 オスラーが生涯愛読した Religio medici(医師の信仰)は,1600年代の本から遺言により棺に載せたものと同版のものまでも展示された。オスラー内科書も二組またオスラーのサイン入りの単行本も目にすることができた。論文では20歳時の最初の論文も展示された。
 今回のオスラー展を機に,医学部大学院生と教官全員に“Sir William Osler Aphorisms”を贈った。また,松木教授は「サー・ウィリアム・オスラー賛歌」を上梓した。これらは本館でも分館でもご覧いただける。
 最後に,本展示会開催の「ごあいさつ」を記したい。「二十一世紀に入り,すべての分野で変革の大きな波が押し寄せておりますが,医学,医療の分野も例外ではありません。なかでも医学教育は大変革が求められております。このような時期において,いたずらに新規を求めることや,いたずらに過去を否定することだけでは改革が出来ません。それよりも原点に立ち返って,確固としたパースペクティブを持つことが大切であると考えられます。今から百年前にアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学で近代医学教育の基礎を作ったウィリアム・オスラーの人となりと業績を,彼の著書や論文別刷などによって間近に知ることは大きな意義があると思われます。改めて,医学とは何か,医療とは何か,教育とは何かを考える絶好の機会として下されば幸いです。」

(くどう・はじめ 医学部教授)


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